2019年7月〜2020年8月 『新生』掲載 吃音川柳・短歌
大阪吃音教室の機関紙『新生』に掲載された吃音川柳・吃音短歌を味わってください。

2020年7・8月合併号
あおりには我々からも厳罰を レッツキッツ
子供の頃ぼ、ぼ、ぼくと平気で言っていた誰かがそれをどもりと呼ぶまで 堂森之宮人
よくどもる君との電話終えるとき最後の声まで確かめて切る 堂森之宮人
2019四万十川短歌全国大会秀作賞
2020年6月号
新薬をどもる人にはドモヘルミン レッツキッツ
記憶の君いつも手刀切っている吃の随伴運動として 堂森之宮人
吃音を隠し下向く高校の庭にはたしか白詰草が 堂森之宮人
2019若山牧水みなかみ紀行短歌大会入選
※2020年4月号、5月号は休刊
2020年3月号
順風も寒のもどりで吃もどる レッツキッツ
言いやすいのは「主人」だが言いにくい「連れ合い」選ぶ私の矜持 たんかこ
かの昔我が家に黒い恐怖来るどもりのオレの天敵、電話 堂森之宮人
よくどもる私が今日は滑らかにしゃべっているから夢だとわかる 堂森之宮人
2019全国短歌フォーラムin塩尻入選
2020年2月号
うしても どってしまい ふれいん レッツキッツ
秘密ではないまだちゃんと告げてないだけ君知るや我は吃音 たんかこ
楽しかった記憶を選り分け干し上げて干し草とする夢に敷くため 堂森之宮人
すみません床屋で寝るのが好きなのでしゃべりませんがよろしいですか 堂森之宮人
2019武蔵野市短歌大会入選
2020年1月号
吃が泣く神が手紙書く長月 レッツキッツ
(回文川柳 きつがなくかみがてがみかくながつき)
お名前は? と聞かれ一瞬立ちどまるどもる我には高いハードル 堂森之宮人
どもることイコール失敗なのだろうか正しく時報の打てない時計 堂森之宮人
2019年房総一宮館文学碑記念短歌大会選者賞
2019年12月号
キツ・オンをキツ・オフにすればどもりません レッツキッツ
だれもみな鬼子を一人隠し持つ我には吃という鬼子あり 堂森之宮人
どもらずに言えることばを探すのがおっくうになる大雪の日は 堂森之宮人
2019隠岐後鳥羽院大賞一次選考通過作
2019年11月号
素泊まりを十回言えば素どもりに レッツキッツ
いつからか「どもりは治る」の看板が平気で見れる駅のホームで 堂森之宮人
言おうとし結局言えぬあの言葉サランラップがかけられたまま 堂森之宮人
2019若山牧水青春短歌大会佳作
2019年10月号
球場で聞いてみたいなどもり嬢 レッツキッツ
電話さえ早くかければ即解決なぜにできぬか半日前に 堂森之宮人
写真の中苦手な「カ」音で永遠にどもる私が口開けている 堂森之宮人
2019荒城の月短歌大会優秀賞
2019年9月号
どもりの働き方改革個室義務付け レッツキッツ
口に出す間合い計るが言い出せぬ長縄跳びに入れぬごとく 堂森之宮人
本線に合流のときの緊張感どもりの我の第一声に似る 堂森之宮人
2019長塚節文学賞入選
2019年7・8月合併号
ばれまいと逃亡生活早や還暦 レッツキッツ
壇上で突然マイク渡される言葉出ぬまま夢より覚める 堂森之宮人
どもってでも言いたい言葉は何もない悩まなくなった吃に気づけば 堂森之宮人
2018岐阜県文芸祭入選