《大阪吃音教室 例会記録》

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・吃音教室2004.10.15・記録
テーマ:からだとことばのレッスン
外部講師:竹内 敏晴さん
参加者数:30人(内、初参加者6人)
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18:55〜 (竹内さん)円座での話合い
(竹内)吃音者がことばに詰って話しづらそうにしているとき、聞
 き手の方もつらくなる。聞き手の中には、「なんだこいつ、いい
 加減にせんか」と思う人がいるかも知れない。
 聞き手の立場としては、自分も苦しくなるので、吃音者に「むし
 ろ楽に吃ってほしい」と思う。
 今日は試みに、「のどをあけっぱなしにして話す」レッスンをす
 る。ことばに詰ったとき、息を吐き直し、のどをあけて話す試み
 が、吃音の人が楽に話す手掛かりになればと思う。

(伊藤)アメリカの吃音研究者は、長い間「吃らずに話す」治療法
 を追い求めて得られず、「流暢に吃る」、「楽に吃る」訓練法を
 探していた時期がある。この訓練法は難しい。
 しかし、「楽に声を出す」はできそうに思う。

(竹内)対話中の人を調べた実験がある。聞き手は黙って聞いてい
 るだけではなく、話し手と息を合わせている。話し手のつらさと
 聞き手のつらさには、つながりがある。

(東野)楽に吃ることができれば、確かに良いと思う。相手との関
 係で、緊張が起こらずに話せたら良い。
 それには吃る側の、吃音との向き合い方が大きく影響する。吃音
 を気にするのでなく、そのままで良いと思えれば違ってくる。

(竹内)自分の方がちゃんとしてから相手に向き合うという考え方
 には、既に緊張があるのではないか。
 自分の経験では、相手が恐いとき、恐がっている自分を自覚しつ
 つ、からだの力を抜いて落ち着いて、そのまま相手と向き合うこ
 とから始める。

(東野)吃音をそのままで良いと思うというのは、「吃ってもしゃ
 あないやん」と、現実を受け容れること。どもりを否定すること
 をやめ、認めることで向き合える。

(竹内)アメリカ流の考え方では、「自分を認める」ということを
 よく言う。人に、徹底的に楽観的であることを求める。
 宗教でさえも、アメリカでは楽観的宗教になる。しかし、悲観的
 に、どうにもならない自分がどう生きるかを問うところから、よ
 り深い信仰が生まれる。
 悲観的になってはいけない、ということはない。「認めなければ
 いけない」とはしたくない。東野さんの発言は正しいと思うが、
 そのままでは何かが足りない。

(東野)「楽に話す」と聞いて連想したのは、ある吃音者のこと。
 彼はひどい詰まり方で、来るそうな表情をし、強い随伴症状と共
 に吃る。彼のつらさはこちらにも伝わって苦しくなる。もっと楽
 に喋ってくれたらこちらも楽なのにと思う。

(竹内)「楽に話す」ことは、本人が自分に問うて、自分でそれを
 選ばなければならない。本人が選んでこそ、次に行ける。

(伊藤)アメリカ流の言語病理学で考えて来たのは、自分(話し手
 側)の都合ばかりだった。竹内さんの、聞き手も一緒に楽になる
 という発想は斬新だし聞いて楽しい。

(竹内)乱暴に言えば、自分の状況に相手も巻き込んでしまえばい
 い。ことばは聞き手のからだで、はじめて成り立つのだから。

20:05〜 (竹内さん)からだとことばのレッスン
・力を抜いて立ち、息を吸って胸を落とし、前に向けてまっすぐに
 息を出す。その息に乗せて声を相手に届ける。
・奥歯を広げてのどを開け、舌を前歯につけ、「らららー」と声を
 出す。「らー」は自然に「あー」になる。
・明るい「あー」の声は、あとからあとから息を前に前に送り出す
 ことで、はじめて「あー」の声になる。
・のどをあけたまま、口の形を変えるだけで「あーえーいーおーう
 ー」と、すべての母音を出してみる。

・のどをあけたまま歌う。「はるのうららの、すみだがわ・・・」
・立ったまま歌う。足踏みをして歌う。歩きながら歌う。

20:45〜 (竹内さん)円座に戻り、一人ひとりのレッスン
・のどをあけたまま、「はるのうらら」と声に出す。
・音どうしをつなげて出すのではなく、一つひとつのことばをしっ
 かりと、しかし切れ切れではなく話す。
・どこにも力みがなく、むしろ頼りない感じ。音は口の中で響くの
 ではなく、外に響き出ていく。
・話す前に息を吸わない。息を吸ってしまったら、胸を落とし、力
 を抜いてから話す。

21:00  終了
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