変化すること
『治すことにこだわらない、吃音とのつき合い方』感想文

佐藤 礼子(40代 会社員)

 
『治すことにこだわらない、吃音とのつき合い方』
 
 第3章についての感想を書きたいと思います。(P.43〜)
 
 佐々木和子さんと初めて出会ったのは、彼女が大学生のときでした。当時、大阪言友会(OSPの前身)は、年に一度、文化祭を開催していました。
 彼女と私は「影絵」に出演することになりました。影絵の動きは、プロに近い方に指導してもらったので何とかできました。
 しかし、セリフは、二人とも、かなり重い『どもり』だったので、前もってテープに録音しました。一泊して録音しましたが、二人とも、かなり吃って、なかなか録音が進まなかったことを、今でも覚えています。
 
 しかし、3年前の「吃音ショートコース」で出会った時、佐々木さんは、まるで別人のように『どもり』が軽くなっていました。
 私は驚きました。そして、変わりようの理由を知りたいと思いました。今回、この本を読んで、理由がわかりました。
 
 佐々木さんは教職に就き、毎日話す場面に直面して『どもり』と向き合っていました。その体験の中で、「吃っても大丈夫、何とかなる」と自分で実感して、『どもり』を持ちながら生きていったことがわかりました。
 
 私事になりますが、私自身も社会に出て、吃りながら電話をかけ、色々な話す場面に直面していきました。そうしていると、『どもり』を気にしないで話すことが出来るようになりました。
 学生時代に比べると、いつのまにか『どもり』の症状も軽くなり、『どもり』以外の多くの事に目が向き、世界が広がりました。
 このように変われたのも、根底に「吃ってもいい」という気持ちがあるからだと思います。
 
 佐々木さんの体験から、吃っていても話す職業に就ける。また、その方が結果的には、良くなることが、第3章を読んでよく判りました。
 
 この本には、今まで、頭の中で、少し分かってはいたが、はっきりしなかったことが具体的に書かれていて、非常に良かったです。
 ぜひとも、学生の人や、これから就職をしようとする人達に読んで貰いたい本です。
 
OSP機関紙『新生』2005年05月号掲載