この本には吃音のすべてが書いてある
『治すことにこだわらない、吃音とのつき合い方』感想文

堤野 瑛一(20代 パートタイマー)

 
『治すことにこだわらない、吃音とのつき合い方』
 
 素晴らしい本でした。
 この本は、多くの吃音に悩む方たちは勿論のこと、その周りの方たちや、それに、吃音と何の関わりのない方たちにも、出来るだけ多くの人の目に触れて欲しい…、読みながら、そんな気持ちでいっぱいになりました。
 
 何故なら、この本には吃音のすべてが書いてあるからです。
 どもりに対しての理解の希薄さや、誤った情報や認識が飛び交う世間に対し、吃音の実態や真実をすべて明かしてくれる。それに、吃音で悩む当事者たちに対して、この先豊かな人生を送るためのヒントを、たくさん教えてくれる。これはそういう本です。
 
 特に僕は、第2章「吃る人は具体的にどんなことで困り、悩んでいるのか」が感慨深かったです。(P.23〜)
 これは、僕がどもりに独りで悩み、どうしようもなかった頃に、一番他人に解って欲しかった事なのです。この理解が得られず、また伝える事が出来ず、僕は多くの誤解を受けながら独りで苦しみました。
 自分のどもりを知っている身内ですら、この“どもりの苦悩の本質”は理解してもらえていませんでした。
 
 吃音者の多くは、吃音でない人が想像もしないような、特有の事情や悩みをもっていると言えます。
 著者の水町さんは、非吃音者にも関わらず、そういった吃音の問題点を的確に鋭く提示され、その研究や調査の結果を著されています。
 また伊藤さんも、吃音当事者の観点から、それぞれの問題を曖昧にされることなく、ひとつひとつ深く丁寧に掘り下げられています。
 
 そして何よりもこの本は、問題提示や理解だけに留まらず、行き着くところは“吃音をもちながらも豊かな人生を…”に終結していることが、最も重要なのです。
 
 このような素晴らしい本が出版されるのもまた、“吃る力”なのです。
 
OSP機関紙『新生』2005年05月号掲載