2025年度 第34回吃音親子サマーキャンプ

2025年度 第34回吃音親子サマーキャンプ・概要

・日時:2025年08月22日〜24日(金・土・日)
・会場:滋賀県彦根市荒神山自然の家
    (〒522-0047 滋賀県彦根市日夏町字宮前4794番地)


伊藤伸二ブログに掲載された記事から、「第34回吃音親子サマーキャンプ」報告の概要をまとめました。

第34回吃音親子サマーキャンプ、無事終わりました。いろいろなドラマが展開された3日間でした。一番心配だった、食堂閉鎖による影響もなく、スムーズにプログラムが進んでいきました。スタッフひとりひとりの力の結集のおかげです。

初日、大阪のスタッフが僕の自宅まで来てくれて、荷物と僕たちを運んでくれます。最近は、先発隊が早く自然の家に着いて、資料や台本の製本、シーツの配布、お茶の用意など、してくれるようになりました。何の特別なお願いもしていないけれど、みんなそれぞれ動いてくれます。用意ができた頃に、河瀬駅を出発した送迎バスが到着します。砂利道を通って自然の家に到着した参加者やスタッフを迎えるのが、僕の最初の仕事です。懐かしい顔、初めての顔、少し緊張しながら、でもそれ以上にわくわくしながら、歩いてくるみんなを迎えました。

開会のつどいで、あいさつをし、参加者を紹介し、第34回吃音親子サマーキャンプが始まりました。出会いの広場は、毎年、千葉のことばの教室担当者の渡邉美穂さんが担当してくれます。まだ緊張が残る参加者の顔がいつの間にか和やかに、穏やかに変わっていきます。むちゃ振りかと思えるような表現の課題にも、グループごとに歌を歌い、振り付けをし、みんなの前で披露していました。すっかりリラックスしている参加者でした。

夕食後、子どもは年代ごとに、親は4つのグループに分かれて、話し合いです。初参加の多い小学1・2年生グループも、それなりに話し合いをします。ここは、吃音親子サマーキャンプ、吃音について真剣に考える空間なのです。一日目の最終は、スタッフによる上演です。7月に2日間の合宿で、東京学芸大学准教授の渡辺貴裕さんから芝居のレッスンを受けた者が、今年はこんなお芝居だよと、みんなの前で上演します。

2日目のプログラムは、作文教室からスタートしました。一人ひとりが、自分と、自分の吃音と、向き合う時間です。食堂が教室に変わったかのように、原稿用紙を前に、みんな鉛筆を走らせます。苦手な子もいるので、少しお手伝いはしますが、基本的にはひとりで考えて書きます。作文教室と同時並行プログラムは、サマーキャンプ基礎講座です。参加回数の浅いスタッフが対象です。参加者だった子どもたちの中からスタッフとして戻ってきてくれる子たちが増え、今年のサマキャン卒業生スタッフは9名でした。

作文教室の後、2回目の話し合いがあり、午後は、子どもたちは劇の練習、保護者は吃音の学習会です。今年の劇は、宮沢賢治の「雪わたり」。歌ったり踊ったり、からだを使います。声を出すことの楽しさ、喜びを感じてほしいとの願いで、劇は、サマーキャンプの大事なプログラムです。劇の練習の後、子どもたちは荒神山へのウォークラリー、その間、保護者は学習会です。子どもに同行する大人として、学ぶことはたくさんあります。夕食後、子どもたちは劇の練習、保護者はフリートーク。あちこちで話の輪ができていました。

最終日は、劇のリハーサルから始まりました。保護者も、子どもたちの劇の前座を務めるので、話し合いのグループごとに集まり、練習です。「荒神山ののはらうた」と題した親の表現活動は、実は、吃音親子サマーキャンプの隠れた名物プログラムなのです。お父さんやお母さんの弾けたパフォーマンスを見た子どもたちは、その姿に勇気を得て、芝居に取り組みました。小道具、衣装を手作りしてくれた西山さんのおかげで、芝居が豊かになりました。どもりながらもせりふを言い切り、楽しくからだを使って表現し、声とことばに向き合った子どもたちの芝居でした。

劇の上演の後は、恒例の卒業式です。今年はサマキャン卒業生が5人いました。それぞれが、自分の思いをみんなの前で語っていきます。連れてきてくれた保護者も話します。そんな姿を見守る参加者の温かいこと、やさしいこと。小さい子もいるのに、じっと卒業生の語りに耳を澄ませていました。

荒神山自然の家での吃音親子サマーキャンプの開催は、今年限りとなりました。これまでいくつかの会場を使いましたが、1998年に初めて荒神山自然の家にお世話になり、その後ずっと荒神山自然の家で開催してきました。数々のドラマを生んだサマーキャンプの歴史にひとつの幕が下りました。歴代の所長さん、所員のみなさんには、本当にお世話になりました。ありがとうございました。



※この年の吃音親子サマーキャンプについては、3本の番外編ブログ記事があります。吃音親子サマーキャンプがどんなスタッフによって運営されているかが分かる内容です。