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| 2022年度 第31回吃音親子サマーキャンプ |
2022年度 第31回吃音親子サマーキャンプ・概要・日時:2022年08月19日〜21日(金・土・日) ※伊藤伸二ブログに掲載された記事から、「第31回吃音親子サマーキャンプ」報告の概要をまとめました。 第31回吃音親子サマーキャンプ、無事に終わりました。コロナ感染大爆発の中、しかもキャンプ前日には感染者の数が過去最多となる中で、77名の参加でした。こんなに集まりにくい状況でも、初参加の人が多かったことに驚いています。サマーキャンプ開催が必要とされていたのだ、待っていて下さったのだと、うれしくなりました。 サマーキャンプが大切にしてきた柱のひとつ、演劇活動は、初め、コロナのためにできないと思い、別の活動を考えていました。これまで演劇活動を担当してきて下さった東京学芸大学大学院の渡辺貴裕さんと、私たちスタッフとで相談しました。その話の中で、やっぱり演劇は外せないと判断したのが、サマーキャンプ開催10日前のことでした。 渡辺貴裕さんが台本を選び、脚本をつくり、演出・構成をするなど、動いて下さいました。そして、一部のスタッフが、当日の短い時間、おそらく合計1時間ほどの練習で、なんとか形にしたものを、みんなの前で披露したのです。アーノルド=ローベル作の【がまくんかえるくんシリーズ】の「お手紙」というお話でした。 最終日には、同じシリーズの別のお話を、小さなお芝居として、3グループに分かれて完成させました。子どもも親もスタッフも大満足でした。初めて参加したどもる成人が、「演劇って、こんなに楽しいものなのですね」と感激の涙を流していました。声を出す喜び、表現することの楽しさを感じてくれたのでしょう。 もちろん、スタッフとして成人のどもる人と専門家が入る、吃音についての子どもたちの話し合いも充実していました。親の学習会は今回、新しいことを学習するよりも、一人一人との対話を重視したものになりました。 また、中止した2年間で、卒業式ができず、1年前に卒業するはずだった子、2年前に卒業するはずだった子が参加してくれたので、卒業証書を渡しました。計6人が、卒業したことになります。ひとりひとりのことを思い出し、手作りの卒業証書を渡しました。 その後、卒業生のひとりひとりが、メモを見ることなく、自分のこと、吃音のこと、サマーキャンプでの出会い、今考えていることなど、自分のことばで話しました。これは、毎年恒例の光景ですが、見事なものです。これまで、先輩の姿を見て、後輩たちが受け継ぎ、学んできたことなのでしょう。いい伝統が受け継がれていることをうれしく思いました。 初めて参加した人の感想から、一部を紹介します。 ・3日間お世話になりました。吃音親子サマーキャンプには、初めての参加でしたが、親子ともども、とても大きな経験をさせていただいたなと思っています。娘に感想を聞くと、「楽しかった! 自分の他にもどもっている人はたくさんいることがわかった。また来年も行きたい!」と言っていました。この感想を聞けただけで、私は、思い切ってキャンプに参加して、よかったなと思います。 ・吃音の話を聞いていると、人生の生き方を教えていただいているようで、吃音あるなし関係なく、心に響くものでした。自分にとってマイナスと捉えている部分も、自分の一部、特徴として、見方を変え、受け入れる。そして、受け入れた時に、見え方が変わってくる。ここに至るようになるには、自分が自分と向き合い、葛藤や苦しみを乗り越えることが不可欠なのだろうなと思います。 ・私にとっても、参加前と参加後では、心が前向きになるという変化がありました。夏季休暇前、色々あり心が疲れてしまっていました。初参加だったことや慣れない環境で、正直疲れもしましたが、なぜか心は軽やかになっています。まるでセラピーに行ったようです。 ・また明日から、日々の生活が始まるわけですが、この3日間でいただいた『活力』を、忘れないようにしたいです。本当にありがとうございました。 次に、初めて参加したスタッフの感想の一部です。 ・親のグループでの話し合いで、親の様々な思いに触れた。私の親は、私の吃音のことをどのように考え、どのような思いであっただろうか。親の思いについて考えたことがなかった私に、新たな視点を与えてくれた出会いだった。 ・2日目午前、新人スタッフのための研修で、私は「ひとりでぽつんとしている子に、話しかけた方がいいだろうと思う一方で、相手が迷惑に感じないだろうかとも思ってしまって、話しかけられない」と話した。あの場で相談できていなかったら、その後のキャンプは全く違うものになってしまっていただろう。新人スタッフ研修を初日に行うのではなく、2日目の朝というのも、限られた時間の中に上手く組み込まれたスケジュールだと思う。31年の歴史と文化に救われた。 ・入浴は、大阪のベテランの皆さんと一緒になった。みんな裸で吃音のことを話題に盛り上がる。そんな経験は今までしたことがない。「どもりの湯」に肩まで浸かり、癒されたひとときだった。 ・初めて演劇というものに取り組んだ。劇を作り上げていく過程を見学させてもらい、皆それぞれのイメージや気持ちを出し合いながら、共有し、一つの作品を作っていくことのおもしろさを感じた。上演の際には、冒頭、自分も舞台に上がり、庭に咲く花を演じ、その後は舞台袖で皆の演じているのを見届けた。その舞台袖からの景色と、幸せな気持ちは忘れることが出来ないだろう。 ・日本吃音臨床研究会のニュースレター「スタタリング・ナウ」で、吃音親子サマーキャンプ報告やエピソードを読むたび胸が熱くなる経験をして来た。吃音の体験文集や、ことば文学賞の作品にふれる時もそうなのだが、ハッピーエンドの物語だから感動するわけではない。悩みの中にいる時、苦しい時、何かきっかけを得て一歩を踏み出す時、様々な状況のなかで皆、吃音と共に一所懸命に生きている。その姿にいつも心を打たれるのだ。吃音親子サマーキャンプに参加することができて、子どもたちが活動に取り組む姿、兄弟を思いやる姿、親の子に対する思い、スタッフのキャンプに対する思いなどに直にふれることができた。そして、それぞれが生活の場で懸命に生きているということを改めて思い知らされた。自分も今ある力で、自分と向き合い、周りと関わり、生活を大切に、誠実に生きていきたいと、力をもらった。 ☆同ブログ 2022.08.25「吃音親子サマーキャンプ、無事、終わりました」記事 ☆同ブログ 2022.08.27「吃音親子サマーキャンプを終えて 〜東京学芸大学教職大学院准教授・渡辺貴裕さんから見たサマーキャンプ〜」記事 ☆同ブログ 2022.08.28「吃音親子サマーキャンプを終えて 〜東京学芸大学教職大学院准教授・渡辺貴裕さんから見たサマーキャンプ2〜」記事 ☆同ブログ 2022.09.01「吃音親子サマーキャンプに参加して」記事 ☆同ブログ 2022.09.02「吃音親子サマーキャンプに参加して 〜どもる人の立場から〜」記事 |