2017年1月 第5回 東京吃音ワークショップ

第5回 吃音と向き合い、語り合う
伊藤伸二・吃音ワークショップ in 東京・概要

・日時:2017年1月8日(日)
・会場:北とぴあ


伊藤伸二ブログに掲載された記事から、「第5回 東京吃音ワークショップ」報告の概要をまとめました。

今回は、半年前くらいに問い合わせが届き、日本吃音臨床研究会機関紙『スタタリング・ナウ』の定期購読をして下さっている公認会計士の男性Aさんのほか、吃音をめぐって様々な背景を持つ人たちが参加し、どもる人の人生が語られる温かく深い雰囲気の中で進行しました。

たくさんの吃音に関する書籍の中で、「吃音は治る・改善する」には一切目を向けず、僕の「吃音とともに豊かに生きる」主張の僕の書籍をかなり読んでいるAさんは、吃音は治らないだろうし、治せないだろう、吃音を受け入れて生きていこう、そう心に決めました。そう決めたものの、時に、そうできない自分に気づき、悩み、生きづらさを感じています。そんな彼と、いつのまにか、対話が始まっていました。

A 職場で仲間が聞いている中で電話をしないといけないことが多いと思った瞬間から、電話のことばかり考えてしまって、電話への不安から能率が悪くなる。<中略>
 「治す」と「治さない」があったら、僕は、「治さない」の方だとは思っている。でも、吃音を受け入れようとしている僕が、どもらないようにと、言い換えをすると、後ろめたい気持ちになる。言いたいことを、どもって言えるようになるのが、僕の考えるゴールなんですが。

伊藤 ゴールの設定がまずいな。言い換えてしまった自分に後ろめたさを持つのはやめましょう。<中略>
 今、僕はこうしてしゃべっているけれど、いっぱい言い換えをしている。その言い換えは子どものころからしているので巧妙で、無意識になっている。言い換えをしたという意識すらない。言い換えは、どもる僕たちの生きていくためのサバイバルと考えよう。

 <中略>

A 治すか、受け入れてどんなにどもっても言っていくのふたつの選択肢を持っていなかった。

伊藤 どもる子どもたちにも必ず複数の選択肢をもつようにと言っている。吃音以外のことでも、選択肢の幅を広げられたらいい。生きやすくなる。

A どもれるようになろう、に結論を置いていた。でも、そうではなくて、なんとかことばが出るようにいろいろな手を使って、サバイバルして、どうしても出ないときは、どもって言う覚悟を決めましょうということですね。

伊藤 そう。相手に伝えるということを一番大事に考えたら、何でもあり。大事にしたいのは、人と人との関係。ギリギリまで悪あがきをしたらいい。そして、最後はどもるに任せる。

昼食休憩の1時間をはさんで午後5時まで、ワークショップは続きました。こうした時間を過ごすと、僕は、このような時間が好きなんだなあと、つくづく思います。小さな集まりで、目の前の相手とやりとりをしながら、深く話を聞いていく。その中で僕自身も自分のことを語る。そして、周りの人が、その人を、その場を支える。この形が、今一番好きなスタイルです。

小学校2年生の秋から、吃音に深く悩んできた僕は、21歳で吃音を治すことをあきらめ、同じようにどもる仲間と対話を続けてきたことで回復してきた経験をもっています。言語訓練ではなく、哲学的対話が大切、その確信を新たにした東京ワークショップでした。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2017/01/29