JSP年報 Stutterring Now
『レジリエンス』
 
JSP年報第24号  2015年に開催した「親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会」での学びをもとに編集しました。
 特別ゲストとして迎えた、元筑波大学副学長の石隈利紀さんのレジリエンスについての講義、伊藤伸二との対談、国立特別支援教育総合研究所上席研究員の牧野泰美さんの基調提案などが主な内容で、レジリエンスとは何か、子どものレジリエンスを育てるにはどうすればいいかなど、具体的に提案しています。
 揺れる学童期・思春期を生きるために、吃音とつきあいながら生きることを考えるために、そして、新型コロナウイルスが感染拡大する不安定なこの時期を生き抜くために、レジリエンスの必要性は高まっていると思われます。レジリエンスについて、読み応えのある一冊です。


【内 容】
講義 石隈利紀「子どものレジリエンスを育てる
対談 石隈利紀・伊藤伸二「レジリエンスをめぐって
基調提案 牧野泰美「レジリエンスと関係論
基調提案 伊藤伸二「ナラティヴ・アプローチとレジリエンス
講習会報告 坂本英樹「あなたには力がある ―レジリエンス元年―
 なお、レジリエンスとは何かについては、NPO法人全国ことばを育む会発行の「吃音とともに豊かに生きる」に一部書いていますので、それを紹介します。

 レジリエンス
 アメリカの心理学者ウェルナーは、ハワイ諸島のカウワイ島で、貧困、暴力など劣悪な環境で育った、1955年に出生した698名を長年にわたって追跡し、3分の2には脆弱性が見られたが、3分の1は、能力のある信頼できる成人になったと報告しました。この健康な人たちには、「逆境を乗り越える、心的外傷となる可能性のあった苦難から新たな力で勝ち残る、能力や回復力がある」として、弾力・回復・復元力を意味する「レジリエンス」が備わっていると表現しました。精神医療の世界では、環境に恵まれない、トラウマを負った子どもたちのレジリエンスをいかに引き出すかに注目しています。
 これは、人間の回復力を引き出す、心の免疫力なのです。

『レジリアンス−現代精神医学の新しいパラダイム』(加藤敏ほか・金原出版)

 2011年3月11日の東日本大震災の危機的状況を生き抜く子どもたちの姿に、僕は、人にはレジリエンスが備わっていることを見て取ります。スクールカウンセラーとして被災地に入った臨床心理士の国重浩一さんが、震災によって心的外傷後ストレス障害(PTSD)に陥る子どもたちは、世間が考えるほどには多くない、自然災害は誰の責任でもなく仕方がないことだと受け止めていると報告しています。
 人間には自然回復力が備わっているというレジリエンスの概念は、吃音否定の物語から、吃音肯定の物語に語り直すナラティヴ・アプローチとともに、吃音の今後の取り組みに役立つと思います。
 「脆弱性モデル」は、吃音が将来大きなマイナスになると予想して、吃音を治そうとします。バリー・ギターが、吃音をよく故障するポンコツ車にたとえたのはその現れです。「脆弱性モデル」は、すでに破綻しています。吃音は「レジリエンスモデル」に転換すべき時期にきています。「レジリエンスモデル」は、困難な状況の中でもその子が生き抜く力をもっていると信じて、その力を発見し、引き出そうとします。その力を阻むものと、引き出す力について考えます。
 ことばの教室でできること、してほしくないことについて、長年、大勢のどもる子どもと話し合ってきた一人の人間としていくつかのお願いと提案があります。劣等感にどう向き合い、学校での苦戦にどう対処するかは、教師が教育としてできることです。
両親指導の手引書41「吃音とともに豊かに生きる」(NPO法人全国ことばを育む会)
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『レジリエンス』

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